今宮さんのこと

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Photo by Clive Mason/Getty Images

皆さま、こんにちは。ミヤケです。
年が明けてすぐ、とても残念なニュースが届きました。
モータースポーツ・ジャーナリストの今宮純さんの訃報です。

日本のF1テレビ解説の先駆者、今宮純氏が急逝。享年70歳
https://jp.motorsport.com/f1/news/f1-jun-imamiya/4642945/

すでに70歳になられていたわけですが、現役でテレビ解説をこなされていたのでこの報にはただ驚くばかりでした。

今日のブログは今宮さんについて書かせていただこうと思います。

ドライバーや関係者へのリスペクトを忘れなかった今宮さん

スポーツには勝ち負けがあります。そのため、そこに登場する人物には、かならず優劣が付きます。
放送席で解説するということは、その優劣の差をテレビの前の視聴者に説明するということです。

今宮さんは、その表現に必ず、敗者へのリスペクトが含まれていたように思います。
直接的な批判をせず、柔らかい言葉の選び方がされていたため、優劣を知りたいファンにとってはときに回りくどいと感じられたこともあるかもしれません。
しかし、そこには今宮さんの関係者すべての敬意があったのではないかと思います。

テレビではないのですが、それが端的に表れたエピソードがあります。
以前、ミヤケが今宮さんのトークイベントを観覧したときのこと。
開演前に、質問したいことを紙に書いて提出しイベントの最後に森脇基恭さん、津川哲夫さんら出演者が答えるという企画がありました。

天の邪鬼なミヤケは何を尋ねようか迷った挙げ句「テレビでは答えにくいことを質問して、辛口な意見を引き出してみよう」と考えました。

質問状には「某ドライバー(誰なのかは伏せます)はF1のレベルに全く達していないと思う。最終戦までにはシートを失うのでは?」と書いて提出。

質問コーナー、次々と参加者からの質問が読まれる中、運が良かったのか悪かったのか、僕の質問が偶然今宮さんの手に渡り、読まれ始めました。が、質問文の前半だけを読んで、顔をしかめながら「……僕は、彼はよくやっていると思います!」とだけ答え、その質問は終わりました。

うがった答えを引き出そうと、数十人のファンの前に今宮さんの本音を晒してみたいと考えた自分が恥ずかしくなったことを覚えています。

アシストに回り、実況アナを立てた今宮さん

敬意を払うことは、レース参加者に対してだけではなく放送席にいる人達にも忘れることはなかったと思います。

F1ブームを牽引した古舘伊知郎さんはじめ、馬場鉄志さん、野崎昌一さんとのやり取りを映像で見ても、それを感じることができました。

ストーリーテラーとしての実況アナ。そこに知識者として注釈を付け足す。

アナウンサーが気づいていない・忘れていることを少ない言葉で話し、レースという物語を飾る。

思い出すのは伝説の1992年モナコGP。
レース終盤、当時最強を誇ったウィリアムズのナイジェル・マンセルが緊急ピットインし、マクラーレンのアイルトン・セナがトップを奪い、マンセルがセナを猛追するシーン。
実況は現在「めざましテレビ」でおなじみの三宅正治アナです。


残り5周
三宅「マンセルとセナの差は先程のラップで5秒1ですが、このラップでどう変わっているか!?」
今宮「マンセル22秒!」
三宅「1分22秒974!マンセル、ファステストラップ!怒ったマンセル!ここからアイルトン・セナをここから追い上げるか!?」
(中略)
三宅「あと5周あれば、ギリギリというところ…」
今宮「ただ、モナコは抜けないですからね(中略)マンセルのほうがパフォーマンスがあっても抜くポイントが無い訳ですからね」

残り4周
三宅「すごいバトルだ!これはモナコGP史上に残るレースになるかもしれません」
今宮「50回記念ですね!」
三宅「素晴らしいレースになっている、メモリアルレース!この50回目のレースはすごいバトル!」

残り2周
今宮「いやぁ、(トップを行くセナに)ブルーフラッグ出ましたよね」
三宅「しかし、残りあと2周セナは譲りません!譲るわけがない!」

ファイナルラップ:最終コーナー
三宅「どんなにしても抜けない!ここはモナコ、モンテカルロ!絶対に抜けない!」

チェッカーフラッグ直後
三宅「アイルトン・セナ逃げ切った!アイルトン・セナ抑えきった!今シーズン初勝利!」
今宮「あー、エンジンから煙!セナのエンジンから煙が見えましたね」
三宅「(略)最後の最後ギリギリいっぱいのところまで、マクラーレン・ホンダのマシンは我慢しました!」


分かりますでしょうか?

今宮さんが情報のトスを上げて、実況が見事にそれをストーリーにする。

三宅アナの「ここはモナコ、モンテカルロ!絶対に抜けない!」というフレーズも、今宮さんがいなくては出てこなかったかもしれません。

この世紀のバトルの現場、三宅アナの名調子を隣で今宮さんが紡いだと言っても過言ではないと思います。

リアルタイムに推移するデジタルデータを理解することが重要な現代F1とは大きく時代が違ったとはいえ、実況放送というストーリーづくりの下支えをする役割を、今宮さんは意識されていたのだと感じます。

現場から現実を直視した今宮さん

今宮さんのことを思うとアイルトン・セナのアクシデントを伝える中継映像に辿り着くベテランファンの方は多いのではないのでしょうか?


こういう事実は、モータースポーツに働いている者の一人とすれば、
やはり受け止めなければいけない。
シューマッハも言っていましたけども、
こういう事実からモータースポーツは続いていくんですね。
再来週はモナコGPですが、セナはいませんが、F1は続いていくわけです。


今宮さんが初めてF1を現地で取材した73年オランダGPでも、ロジャー・ウィリアムソンという若いドライバーが亡くなっています。
火に覆われたウィリアムソンの車を見たデビッド・パーレイというドライバーが自分のレースを諦め救出に向かいます。
パーレイはどう見ても装備の足らないコースマーシャルたちと必死にウィリアムソンを車から引きずり出そうしますが、火は容赦なくマシンを包む。
パーレイは他のドライバーに車を止めて救出手助けするよう訴えるのですが、誰もレースを止めようとしない。

ジャーナリストとしての希望を持って、渡航費を工面してようやくたどり着いた本場ヨーロッパのサーキットで見た事故。
ドライバーへのエンパシー(共感、感情移入)を最大限に持とうと努める今宮さんのショックは計り知れません。

モーターレーシングは他のスポーツに比べて「変わらない」と約束されている要素が少ないと思います。

ルールも変わる。
昨日まで使えた武器が使えなくなる。
チームオーナーが変わる。
人が流動する。
仲間が裏切る、亡くなりもする。

それでも次のレースウィークはやってくるから、コースに向かわなければいけない。

「それでもF1は続く」

ものすごくシンプルな表現ですし、当たり前のことかもしれません。

しかし、この言葉は1970年代からずっとコースサイドに赴き、華やかで美しいだけではないモータースポーツの側面を知っていた今宮さんだから言える言葉だったと思います。

セナの事故は悲しい事故でした。
しかし不謹慎を承知で言えば今宮さんを思うとき、F1史上最も大きな事件と言えるあの事故を回想させるのは、ジャーナリスト・今宮純の最大の偉業と言えるかもしれません。

今宮さんは、あのサンマリノの現場での自分のレポートを「みっともないコメントだったと恥じている」そうです。
みなさんもそう思いますか?

終わりに

かくいう自分も恥ずかしながら、今宮さんが亡くなるまで今宮さんのことを深く考えたことはなかったです。

しかし、調べれば調べるほど、今宮さんの功績は大きい。

自分は今宮さんの足元にも及びませんが、今宮さんが残したもの絶やすことなく、未来のファンやドライバー、エンジニア、関係者になる人たちに残していければと気持ちを新たにしました。


今宮さん、長旅お疲れさまでした。
その長旅の我慢とあなたの情熱のおかげで、日本にモータースポーツとF1がしっかりと伝わりました。
ありがとうございました。

“今宮さんのこと” への2件の返信

  1. そうですね。
    今宮さんの解りやすい解説大好きでした。
    セナが亡くなり、自分は一時期F1を見なくなり、しばらくして、久しぶりにF1を見た時、今宮さんの解説がまた聞けて凄く嬉しかったのを覚えています。
    そして現在に至る所ですが、今宮さんの言うようF1は続いていく訳ですが、残された我々は、盛り上げていくのも課題だと思います。 ありがとうございました今宮さん。

  2. 大学1年の時、TBSテレビの視聴者プレゼントが当たり、偶然にも見ることができた76年の日本GP。雨の中の凄いレースでした。77年の事故で以後行われなくなり、その後ホンダの参戦と中島悟の参戦もあって復活した日本GPですが、中島さんの活躍も楽しみでしたが、やはりセナの活躍は否が応にも惹きつけられました。
    そして、こちらのブログでも話題にされた92年のモナコをテレビで見て、翌年、初の海外F1観戦にモナコを選びました。
    93年もセナが勝利。そのウイニングラップが生で見た最後のセナとなりました。
    今宮さんが開催していた「クロストークミーティング」には私も昨年2回ほど参加して、また今年もお話を伺うのを楽しみにしていたので、氏の訃報には本当に驚きましたし、残念でなりません。
    今年のF1が天国から面白いと言ってもらえるようなレースになることを願っています。

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